平成29年度発行 ものづくり事例集(第3刊)
15/64

県内産こだわり無添加手作りチーズの品質確保と安定供給に向けて1本事業への取り組みの経緯【酪農家ならではの搾りたて牛乳が魅力の一つ】昭和54年及び61年に実施された生産調整により、廃棄せざるを得なかった牛乳を活用した乳製品製造に着手、独学でチーズ作りを学んだ。当時はチーズに関しての余計な予備知識がなかったことが奏功し、十数年の試作を経て、世界に一つしかない完全オリジナルのチーズを完成させ、ブランド化した。酪農家ならではの新鮮なミルクが原料であることも大きな魅力となった。また、月に数回開催していた「チーズ作り体験会」が代表夫妻のノウハウ構築に一役買った。チーズ専門店の目に留まり注文が増えたことから、これまでの製造能力では需要に対応できず、本事業を活用し製造設備の導入を計画した。2実施内容【導入したチーズバット】ナチュラルチーズ製造における基本装置である小型(45L)の「チーズバット」を3台購入。この機械は低温殺菌や自動温度管理が可能な装置で、それまで小型1台の「チーズバット」のみであったことから、製造能力は大幅に強化された。また、牛乳からクリームを製造する「クリームセパレーター」を新規導入、これによりクリームチーズの製造が可能となり、商品ラインナップを増加することができた。さらに、6畳ほどの広さの「プレハブ冷蔵庫」を導入、熟成に数ヶ月を要するチーズの作り置きする場所が大幅に増えたほか、通常の商品在庫の保管場所としても活躍することとなった。こうした機械設備の導入により製造能力は従来の2倍以上となり、酪農業の空いた時間にフル稼働して製造するチーズをある程度の量保管することが可能となった。着実に需要が増えていた自社ブランドの手作りフェルミエチーズ『雲仙フロマージュ』はさらに多くのチーズファンに浸透することとなり、需要に対応できないというもどかしい思いを解決することができた。3取組成果・波及効果【雲仙市の静かな山中に佇む牛舎と店舗】長崎市内の大型店での催事出店しかできなかったが、導入した設備により代表夫妻自らが東京都の大手百貨店の催事などに出店し、自社商品の魅力を伝えながら販売する時間的・在庫的な余裕が生まれた。また、酪農のスタッフが成長しある程度任せることができるようになったことで、チーズ作りに費やす時間が増えた。こうした中、平成29年3月には牛舎の隣に直売所兼『雲仙フロマージュ』を使用したピザが売りのカフェを新築し、土日のみ営業している。山奥の立地が逆に魅力の一つとなっている。●パインテールファーム株式会社代表取締役松尾順介●Eメールアドレス/ptfarm@ybb.ne.jp●設立年月/平成26年1月●資本金/500万円●業種/酪農業・食料品製造業●従業員数/4名13

元のページ  ../index.html#15

このブックを見る