平成29年度発行 ものづくり事例集(第3刊)
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移動式冷暖房装置の振動解析技術の構築による強化と軽量化1本事業への取り組みの経緯【本社工場】冷凍機器製品の設計製作をするほかに、三菱電機冷熱プラント(株)発注の国内航空機向け「移動式冷暖房装置」の設計製造も行っている。従来は「移動式冷暖房装置」を2次元CADを用い設計し試作機を製作。高速や一般道路で意図的に振動を与え、装置の安全性を検証したが、配管が輸送振動等で破損するケースがあった。2次元CADの場合は試作機製作後、検証するまで不具合が判明しないため設計と試作機製作のやり直しに時間を要していた。また、振動対策をクリアするため設計段階で強度を必要以上に強くする場合が多く、コストが嵩み収益面の低下を招いていたため、改善することが課題になっていた。2実施内容【3次元CADによる強度解析】作業工程や経費のムダを解消するために、まず動的解析が可能な3次元CADの導入を決定。機種はデータの互換性を考慮し主力受注先である三菱電機グループが使用している同機種の3次元CADを導入。社員の中から4名のオペレーターを選出、オペレーターには最初の1週間は図面を書くまで、次の1週間は3次元CADに附属している解析ソフトについて研修を行った。次にどの程度の規模の装置を解析できるかを検証した。長崎県工業技術センターの協力を得て試作機で実測結果を出した場合と解析ソフトに数値を入れた場合を比較した結果、数値に誤差があることが判明、解析精度を高めることが必要となった。解析技術を構築するため、配管部のモデリング、振動解析、作図、試作機製作、計測・評価の順で検証し、実測結果に対する計算結果の誤差が±10%以内を目標とした。振動解析や計測・評価の結果が誤差が大きい場合は、配管部のモデリングからの見直しを繰り返すことで解析技術を向上させることに成功した。3取組成果・波及効果【防衛省用移動式冷暖房装置】2次元CAD使用時に比べ、3次元CAD使用時は設計時間に数倍の時間を要する。ただし、解析技術の向上で実測結果との誤差は±10%以内となり、試作機製作後の検証を繰り返さなくなった分、試作費用の削減と設計時間の短縮化が図られた。また、品質が安定し受注先からは高い信頼を得る一方、試作機にかかる経費を削減でき収益力は向上している。同業大手との競争力を強化できたことで、「移動式冷暖房装置」の受注は活発に推移、来年度の成田空港・羽田空港・関西空港の「固定式冷暖房装置」更新においても受注に結び付いている。●株式会社大東エンジニアリング代表取締役大橋泰子●Eメールアドレス/k_irie@daito-eng.co.jp●設立年月/昭和56年2月●資本金/3,000万円●業種/冷凍機器製品の設計製作●従業員数/21名17

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