平成29年度発行 ものづくり事例集(第3刊)
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低温管理技術導入による高品質・高付加価値『地酒』商品の開発1本事業への取り組みの経緯【大吟醸長崎美人のラベル】日本酒は需要の減少とともに、生産量が昭和48年度の1,766klをピークに年々減り、現在は約3分の1にまで落ち込んでいる。食の多様化や嗜好の変化が原因であるが、一方上質で特徴のある純米吟醸酒や大吟醸酒、純米酒などの特定銘柄には一定のファンが付き需要は増加している。当社の商品のなかでも「福田(純米吟醸)」や「長崎美人(大吟醸)」などは注文が増加しており、生産が追い付かない状況が続いていた。こうしたニーズの高い品質の特定銘柄を安定して増産できる体制を整えるため、本事業を活用し低温管理技術を利用した設備を導入した。2実施内容【木の質感が伝統を物語る酒造場内】従来もろみの発酵は低温発酵といわれる方法で、複数のタンクに冷蔵チラーで冷水を循環させ温度管理をしていたが、均一な温度低下が難しいという課題があった。しかも、近年は地球温暖化などの影響から仕込み時期である真冬でも気温が10℃を超えるケースが増え、従来の方法では温度管理が難しくなり、酒質の安定化に苦労していた。これに対処するため、タンクごとに温度を数値化し精緻な温度管理ができるサーマルタンクを導入し、安定して目標とする酒質を得ることができるようになった。また、従来は室内温度の制御管理ができない場所で上槽工程を行っていたが、自動圧搾機を洗浄する際に大量の水を使用するため、気温が10℃を超える場合は湿気で圧搾時に使う布にカビが発生する原因となることもあった。この課題に対処するためプレハブの冷蔵庫を設置、上槽過程を室温管理が可能な場所で実施できるようになり、品質保持と製品劣化を防ぐとともに、衛生面でも作業場の環境改善が進んだ。3取組成果・波及効果【福田酒造全景】サーマルタンクとプレバブ冷蔵庫の導入により生産工程と製品貯蔵における品質の安定化や衛生面の改善が進み、同時に生産性も向上。これまでは11~12月に開始していた仕込みについても、気温の高い10月に開始できるようになった。このため、人気の高い純米吟醸の「福田」は導入前まで年間100万石の製造が限界であったが、導入後は150万石にまで製造量を増やすことができ、今後200万石も視野に入ってきた。増産により需要が高まっている関東や海外への販路拡大が可能となった。●福田酒造株式会社代表取締役福田詮●Eメールアドレス/jagatara@vega.ocn.ne.jp●設立年月/昭和51年7月●資本金/1,000万円●業種/酒類製造●従業員数/17名23

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