平成29年度発行 ものづくり事例集(第3刊)
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33曲げ加工技術の高度化による市場シェアの獲得1本事業への取り組みの経緯鉄鋼製品の曲げ加工から製缶加工の一貫製作を得意とし、中でも長崎県内最大級の大型曲げ加工ができる機械「ベンディングローラー」を使い各種タンクやプラント工事、船舶艤装品を製作している。エネルギーインフラの整備促進や国際的なLNG船の需要増などを背景に難しい形状の曲げ加工や精度、納期など発注先の要求するレベルは高度かつ高速化しており、受注できないケースや外注率が高まる状況にある。さらに熟練工の高齢化が進み、技術を継承する人材が不足する懸念があった。こうしたなか、曲げ加工部門に最新鋭の機械を導入し加工能力を高めることを目指すことになった。2実施内容コニカル(円錐)曲げ加工において、既存の設備では機械操作・応力・角度調整など加工作業は全て手作業だった。そのため、求められる高い精度に達するには熟練した技術を要した。また、人力であるため加工には時間を要し、短期納品に対応できなかった。この問題を解消するため、難しい加工技術に加え高い精度と効率化が必要となり、最新鋭NC制御付プレスブレーキを導入した。平成28年1月工場内に据付し、調整や試運転を経て引渡完了までは1ヵ月を要した。試運転と試作では、まず90度角度曲げの試運転を行い、バックケージ機能によりマーキンが要らないため加工時間を80%削減できることがわかった。新機種導入に伴い従業員に対する研修を実施、メーカー工場での事前研修や導入時研修、実技研修などを実施し、経験の少ない若い工員でもNC制御盤のタッチパネル操作により比較的早く技術取得ができ、事業実施期間中に3名の技術者養成ができた。さらに、従来幅の2.5倍の曲げ加工に成功、品質面でも加工中の押し傷がほとんどない仕上がりとなった。3取組成果・波及効果曲げ加工における精度としては、NC制御付プレスブレーキでの加工ではプレスによる金型の跡は殆どなく、数値入力のみで押し加減は自動制御され高品質の加工が可能。またデータは保存し再利用が可能な上、曲げRの微調整も容易になった。こうした結果、地場造船業・プラントメーカーとの取引拡大が可能となり、県内受注を盤石とし、さらに県外需要の獲得、展示会出展、商談会参加へと結びつけている。早速、缶の高さがある長物のコニカル曲げ加工を受注し納品を完了しており、受注力は着実に強化されている。●株式会社時津鉄工所代表取締役永田克己●Eメールアドレス/tti@m3.dion.ne.jp●設立年月/昭和40年4月●資本金/2,000万円●業種/鋼構造物製作●従業員数/20名【本社工場全景】【最新鋭NC制御付プレスブレーキ】【NC自動制御によるコニカル曲げ加工】

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