協同組合長崎県鉄構工業会という男性中心の組織に、初めて女性事務局長が登用された。新女性事務局長は、きめ細かさ、誠実さ、そして、思いやりという女性特有の管理能力を発揮し、今までにはない協力関係を築くと共に、組織風土の変革をもたらした。実は、女性事務員の事務局長登用には、組合経費の削減という意図が隠されていた。しかし、結果的に、最近話題になっているアベノミクス成長戦略における女性力活用の先駆けとなる事例をつくったといえる。

　事務局長就任の翌年から３年間、「中小企業人材確保推進事業」に取り組み、女性の視点を取り入れ、これまでにないきめ細かな協力体制で人材育成事業を推進した。そして、その協力体制を基に、丁度基準の改正が行われた時期と重なり会員の半数にも及ぶ１１社の工場認定グレード更新支援を行った。そして、創立４０周年記念行事実施に向けた事業取組、更に、若手技能者育成に係わる講習会の開催、並びに、従来都心部で開催されてきた技術資格認定講習会等の長崎県招致実現、等々を通じ求心力を高め、会員企業減少傾向の中、組合員の意識向上に大きな成果を上げた。

　建設業界、タクシー業界、貨物輸送業界等々、男性社会といわれる企業で女性の活用が始まっている。その根底には、労働力不足への対応というだけではなく、事業における男性的発想の限界を女性特有の発想で補い、新商品・サービスの開発や、高齢社会に相応しい組織風土への変革という経営戦略的狙いがある。当組合においても、女性事務局長の登場が、組織管理のあり方に新風を吹き込むという効果をもたらした。これを機に、会員企業においても、戦略的女性活用に向けて、「強い経営から優しい経営へ」の転換が始まることを期待したい。